揺れる明り

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 人には言えないが、世の中には確実に私たちが生活している日常とは違った空間が存在していると私は思っている。

 それは、小さいころから体験してきた様々な出来事が私に確信を持って教えてくれている。

 脳科学者に言わせれば、脳の誤作動だと一笑されてしまうかもしれないが、そうだとは言えない現象に遭遇すると、それが当然の様にそこにあるものだと思われてしかたない。

 つい最近も不思議な出来事があった。

 元来、能天気なのかこれまで生きてきて不眠症というものになったことがなかった。

 あの出来事が起きる前までは・・・。

ほんの数か月前の出来事。珍しく夜中に目が覚めた。

 私は眠るときに照明があるとよく眠れないので部屋はいつも真っ暗にしていた。

時間を確認するために、枕元にあるはずのスマホを手さぐりで探した。

当然真っ暗な部屋なので、何も見えずあちころ手を動かしてやっと掴んだ。

寝付く前にスマホでネット検索等する習慣があり、明るさを最低レベルにしているため、スイッチを入れると、薄暗い明りの中で画面が現れた。

時間は確か3時10数分頃だった。

 目が覚めてしまい寝付けなくなったしまった私は、布団に入ったままニュースを読み始めた。

私の家は二階建ての一軒家で 三人の子供達と住んでいる。

寝室は、私が一階の和室、子供達は二階の各自の部屋で寝ている。

一階の間取りは、リビングダイニングキッチンが1つの空間になっていて敷居はない。ただ、私が寝ている和室だけが襖で仕切られている。

 二階には子供たちが三人寝ているため一階にいるのは私だけだ。

 私は一人いつものように襖で仕切られた和室で、布団にくるまり真っ暗な中スマホでニュースを読み始めた。

 数分たった時、シーンと静寂に包まれた家の中で、「ゴトッ」と音がした。

キッチンの方だ。かすかな物音。キッチンもリビングも当然電気は消してあり真っ暗なはずだ。

たまに音そんな音がするときがあるので、特に気にすることもなくそのままニュースを読んでいた。

 数十秒してまた、「ゴトッ」と音がしたかと思うと、続けて「ガサッ」「ザッ」とかすかな音がする。

誰かがいるような気配だ。

 夜中、子供達の誰かがキッチンで夜食を調理したり水を飲みにきたりしている時があるので、三人の娘の内の誰かが私を起こさないように気を使って、そっと動いているんだろうと、それほど気にせずそのまま布団の中でニュースを読んでいた。

「ガサッ」「ガサッ」と続けてかすかな音がする。

ナイロン素材の服の擦れる音のような音。

やはり、キッチンの方だ。

「ガサッ」「ガサッ」「ザッ」「ザッ」と小さな音が連続して聞こえる。

相変わらず子供の誰かだろう。と私は全く気にすることもなくニュースを読み続けていた。

 そのうち、「ミシッ」「ミシッ」とフローリングをゆっくり踏みしめ人が歩くような小さな音がキッチンから少しずつ私のいる和室の方にむかってきた。「ん?」

ここにきて、さすがの私も「なんだろう?」と襖の向こうの音に注意をむけ、スマホから目を離し襖を見つめた。襖は三枚あり襖は締め切ってはいる。

 そこで、驚愕した。

薄暗い明りが感覚を空けて数本縦に漏れている。

 そのとき初めて気が付いたが、襖と襖の間には微妙な隙間があり、そこから薄暗い明りが揺れながら漏れていた。

 隣のリビングは真っ暗のはずなのだ。

もし、子供達の内誰かがキッチンで何かをしているなら、キッチンの小さい蛍光灯を点けるだけで事足りる。

リビングに来るのであればリビングのの電気は点けてから来るはずだ。

 明らかに異常な出来事に、思わず見入っていた。

その明りは白くLEDのライトの様な明りだ。

もしや、子供がスマホのライトを点けているのかとも一瞬思ったが、明りが炎のように揺れていることでそうではないと瞬時に気が付いた。

 少しずつ「ミシッ」「ミシッ」「ミシッ」とゆっくり、ゆっくり近づいてくる。

襖の間から縦に漏れる明りも揺れながら少しずつ大きくなってきた。

 真っ暗な和室に入ってくる明りは相当明るくなってきた。

LEDライトの様な白く明るい色だが、炎のように揺れている。

これは子供じゃない。確信した私はあまりにも異常な状況に慌てて布団を跳ね除け立ち上がり、思い切り襖を開けた。

 瞬間、暗闇が目に飛び込んできた。

何の変哲もない、いつもの夜中3時過ぎの暗い部屋が私の前にある。

 心臓がバクバクいっていた。

それから、寝付けづ部屋中の明りを全て点け異常事態に備えてまんじりともせず朝を待ったが、それ以後何も起こらなかった。

 それ以来、就寝時には小さな電灯をつけていないと安心して眠れなくなってしまった。

その時感じたのは、キッチンで「ガサッ」「ガサッ」「ザッ」「ザッ」かすかな音がしたとき、ナイロンが擦れるような音は、別の空間から何者かが表れてきていたような音だったのではないかと思う。