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昭和40年代、年齢が分かってしまうが、私の入学した小学校は木造二階建てだった。
あの頃は当然背丈も小さく、そのそびえ立つ校舎がとてつもなく大きく見えた。
グランドもしかり。
校舎の中は廊下も壁も当然教室の中まで全て木でできていた。
廊下は歩くたびにギシギシと音がする。
階段も同様。
小さい足を載せるたびにギシギシと木が軋む音がした。
なんとなく、全体が薄暗く校舎の歴史がヒシヒシと小さい心に刻まれた。
教室の情景が今でも鮮明に浮かぶ。
先生が立つ向こうに広く掲げられていた黒板。
自分が座っていた木造の椅子、木造の机。
薄暗いけれどなぜか心温まる雰囲気。
雨が降っていた。
強い雨だった。
校舎にどんどん雨が降る。
水が川になって校舎から外の道に流れていく。
私が歩いてきた道は、まだ舗装されていなかった。
その未舗装の道に容赦なく校庭から流れる雨水が川となって流れていく。
道に流れ込み雨水が窪みをつくり川になって流れていった。
先生は何か言っていた。
でも私は全く聞いていなかった。
心に残るのは外の景色と薄暗い教室の情景。
入学し、1学期までその木造校舎で学び、二学期夏休みが終わった時から別の場所にできた新築の鉄筋コンクリート校舎へ移った。
幼心にもあの木造校舎にもっと、もう少し通学したかったと思っていた。
鉄筋コンクリートの新築校舎には、馴染めない何かが欠けていたと思っていたのかもしれない。
あの木造校舎は今はもうない。
でも、私の心の中には永遠そびえ立っている。
懐かしい校舎の風景とともに。